胸式呼吸と腹式呼吸における筋肉の動きをちょっと詳しく見てみる
胸で行う…、胸郭を拡げる…、などの表現で説明される胸式呼吸。そして、腹で行う…、横隔膜を上下させる…、などの表現で説明される腹式呼吸。2つの基本的な呼吸の際に、働いている呼吸筋の動きについて少し詳しい解説を紹介します。
呼吸生理学の本間郁夫さんの『呼吸を変えるだけで健康になる−5分間シクソトロピーストレッチのすすめ』(講談社+α新書)を参考にさせていただきました。

makunin / Pixabay
呼吸は呼吸筋が行う
呼吸は肺で行います。ですが肺そのものには、自らの力で呼吸を行う機能はありません。肺への空気の出し入れは、肺が格納されている胸郭という空間(肋骨のカゴのなか)が膨らんだり縮んだりすることで行われています。そして胸郭を動かしているのが、そのまわりに付いているいくつもの筋肉群です。それを呼吸筋と言います。呼吸筋は意外とたくさん
呼吸筋は20種類以上もあります。肋骨のあいだの肋間筋、そして横隔膜(横隔膜も筋肉のひとつです)が代表的なものです。そのほか、大胸筋、腹筋、背筋、首の筋肉なども呼吸筋として働きます。そして、呼吸筋は息を吸うために胸郭を膨らませる吸息筋と、息を吐くために胸郭を縮ませる呼息筋の2種類に分類されます。吸息筋は頸部及び胸部で、呼息筋は胸下部で神経と繋がっています。
胸式呼吸は肋間筋を使う
肋間筋というその名の通り、肋骨のあいだにある筋肉です。肋骨は鳥かごのような形で12対の骨が胸郭を形作っています。上下に並んでいる肋骨の1本1本を繋いでいるのが肋間筋です。肋間筋は、外側から肋骨を繋いでいる外肋間筋と、内側で肋骨を繋いでいる内肋間筋があります。外肋間筋は、肋骨の外側を繋いでいますので、収縮すると肋骨は上に引き上げられ(通常やや下向きに走っている肋骨が水平近くの向きへと上がるイメージです)、さらに肋骨が開く方向に動きます。つまり胸郭が拡がり、肺の中に空気が取り込まれる方向に働きます。よって外肋間筋は、息を吸うための吸息筋です。
内肋間筋は、肋骨を内側を繋いでおり、収縮すると肋骨が引き下げられて(斜め下方向に向くイメージです)胸郭が縮む方向で動きます。そうして、空気が外に吐き出されます。つまり内肋間筋は息を吐くための呼息筋になります。
外肋間筋と内肋間筋の交互の収縮によって呼吸が行われます。その時の骨の動きが、バケツの取っ手を上げ下げするような動きに似ているため「バケット・ハンドル・ムーブメント」と呼称されます。
腹式呼吸は横隔膜を使う
横隔膜は筋肉と腱からなる薄い膜です。胸郭の下側で、胃や腸などの臓器が入っている腹腔との境界を形作るように覆っています。上方向にこんもりとしたドーム状になっています。横隔膜が収縮すると、ドームが下方に押し下がり胸郭の体積が増えます(同時に胸の下側も外側に拡がります)。そうして、肺に空気が吸い込まれます。逆に横隔膜が弛緩することでドームが元に戻り、胸郭が狭まり空気が押し出されます。
以上、呼吸時の呼吸筋の動きについて少し詳しく見てみました。呼吸法のエクササイズなどを行う際にもこうした体の働きをイメージすることができるだけでも、呼吸の質が上がると思います。ぜひご参考に。
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